松田新会長

松田新会長

日時:2025年9月18日(木)18:30~
場所:東京国際フォーラム東天紅

 松田新会長の挨拶から9月例会が始まりました。

松田会長:新会長の松田です。今日は第80代警視総監を務められました井上幸彦先生にお話しを伺います。めったにお目にかかれない方です。私が長々と挨拶するよりお話しを始めて頂いた方がいいと思います。宜しくお願いします。

◇◇◇◇ 講話 ◇◇◇◇

※ 講師プロフィール:井上幸彦1937年山梨県出身、69年京都大学法警部卒業、警察庁入庁。第80代警視総監。

講師の井上元警視総監

講師の井上元警視総監

 プロジェクターや資料等は無く、井上さんも何も見ず、松田会長からのお掛けになってはの声に「このままの方が…」と立ったまま、張りのあるよく通る声で話を始められました。「ご紹介頂きました井上幸彦です。同郷の河野前会長から講師をとお声かけを頂きまして折角の機会なのでお話しさせて頂こうとお受けしました。オウム真理教と闘った経験から危機管理と判断力の重要性についてお話しします。警視総監を拝命した時は前任者からの引継ぎでもオウムのオの字も無く、私が直接オウムに対峙する事になるとは想定していませんでした。」と。

◆ サリン製造
H6年明け警視庁管内ではオウムの気配は感じられなかったが、教祖の麻原彰晃はH7年秋、ハルマゲドン(終末戦争)が起きる、いや起こすと宣言しており、武器を探していた。教団の優秀な信者が沢山いて彼らからサリンという猛毒薬品の名前が挙がり、筑波大大学院卒の土谷正実が材料を揃え70tのサリンを作れる工場を第7サティアンに造った。

◆ 松本サリン事件
サリンが出来るとその効果を試したい。当時教団施設建設を巡って裁判になっていた松本市内で、裁判官のポア(チベット密教用語/オウムでは殺害)に使用せよと麻原。6/27昼、裁判所でサリン噴霧の予定が実行役の1人が遅れ夜になってしまったので、裁判所職員官舎前で噴霧し死者8人、重軽傷者数百人を出す惨事を引き起こした。長野県警ではサリン犯罪は未経験だったので捜査は難航。捜査で聞いた第一通報者の河野義行さんの日頃の言動から犯人ではないかと。捜査は河野さんがターゲットになり、オウムは捜査対象から外れ、信者は“やはり麻原には力がある、ついて行けば間違いない”とより深く信じるようになった。

◆ 仮谷清志さん事件
H7年1/1読売新聞から科警研の調べでオウムの施設がある上九一色村の土砂からサリンが検出されたとのスクープ記事が出、警察に目を付けられていないと思い込んでいたオウム側は慌て、第7サティアンを破壊し証拠隠滅を図り、米軍からガス攻撃を受けている被害者だと主張した。その後警察の捜査に特段の変化も無く、教団は
秋のハルマゲドン(クーデター)に向けて資金を集める事に注力。資産家の信者、公証人役場事務長・仮谷清志さんの妹から全財産を喜捨させようとして失敗。教団から逃げた妹を捕える為、匿っていた兄の仮谷清志さんを拉致し、持病のあった仮谷さんに自白剤を注射して死なせてしまう。

拝聴中

拝聴中

◆ 警察の動き
仮谷清志さん拉致事件を受けて、警察は生存の可能性を信じ仮谷さん救出に向けて動く。実行犯の1人、松本剛の指紋が発見され、責任者は警視総監、現場のトップは刑事部長とし、オール警視庁で解決に当たった。総監、副総監、刑事部長、公安部長、警備部長の5人で会議をし、担当者全体での情報共有に務めた。逮捕状、差押え令状、捜索令状を取り仮谷清志さん救出の日を3/22と定め準備を整えていた。

◆ オウム側の動き
オウム側も情報収集に躍起となり、新聞記者との情報交換で仮谷清志さん救出のXdayが3/20前後だと知るに至る。そして警視庁のお膝元東京で事件を起こせば阻止できると考え、3/20午前8時頃、霞ヶ関に向かう警察関係者を狙って3路線5本の電車内でサリンを撒いた。

◆ 警視庁では
既に総監室にいた井上さんは、救急車やパトカーの多さを見て事件の発生は分かったが実体は掴めていなかった。10時頃に刑事部長から霞が関駅構内の水溜りからサリンの成分が出たとの報告を受ける。このサリンが使われたという情報を“秘密の暴露” として利用するか情報を公開して救命に役立てるか判断は難しかったが、井上さんはすぐに発表することを選んだ。結果、医療現場でサリンへの対応ができ多くの被害者の救命に繋がった。オウムは警視庁の動きを止める為に地下鉄でサリンを撒きテロを起こして出方を見ている状態、ここで怯んだらオウムの思う壺。予定通り3/22に松本剛を逮捕し仮谷さんを救出すべく行動。万全の準備をして上九一色村のオウム施設に入る。捜索は行なえたが仮谷さんも松本剛も見つからず麻原が指示した証拠もなく、1度の捜索では事件の立証に至らなかった。オウム側は一過性のものと考えていたようだが捜索は続行、朝出向いて夜引きあげるを繰り返していた。オウムは麻原が既に上九一色村を出たように見せる陽動作戦を行なったが“出られる筈がない”と読んで怯まずオウムを攻め続けた結果、捜査員が5/16第6サティアンに不自然な構造物を見つけ隠れていた麻原彰晃を通常逮捕。

◆ 林郁夫の逮捕・自白
4/7林郁夫が石川県内で盗難自転車に乗っていたところを逮捕される。取調べの初めには黙秘していたが、取調官が常に医師である林郁夫を“先生”と呼び尊敬の態度を崩さず信頼関係を築いた。その関係性もあって5/6通常の取調後、突然、その取調官を呼び“私がサリンを撒きました”と自白。その後は自らの犯罪を自供し裁判でも事実を述べ、サリン事件の実相を知らせる役割を果たした。林郁夫の供述によりオウム事件関係者の逮捕に加速度がついた事は間違いない。

◆ 記者会見
麻原彰晃逮捕の記者会見は誰がするのが妥当か知合いの記者に訊ねたところ、責任の所在を明確にする為にも警視総監がすべきとの答えだったので、井上さん自ら麻原逮捕を発表。会見の中で記者からの“サリンはまだ残っていますか?”の質問に“サリンは残っていないと判断します”と答えた。途端に記者達が一斉に会場を飛び出して行った。都民、国民の一番の心配はここ、それを報道する為に記者達が飛び出して行った。

◆ 危機管理
トップから末端まで情報を共有した上で、責任の所在を明確にする。トップの判断ミスは当然許されないが、判断に長時間を要するのも信頼を損なう。トップが判断をしたら下達だが、縦割りではダメで横の連絡も密にする事が大事。一方通行ではなく相互で情報共有。事件に関わる警察官全員が事態を理解し行動する事が解決に繋がる。これはどの組織でも共通する重要な危機管理体制。

◆ 井上さんの余談
上九一色村捜索について「警察官に一人の被害者も無く、ガス検知の為のカナリアの殉職(笑)も無く無事に捜索できました。」皆さんクスリと笑い。
記者会見について2000年の雪印中毒事件を例に「社長が原因不明と答えているのへ、大阪工場長がパイプに硬貨大の染みがあったと言いそれに対して私は聞いてないよと言ったり、家から出たところを取材陣に囲まれて“私は寝てないんだ”と不満を漏らしたり、情報共有ができてない上に責任感の欠如も露呈して、一気に消費者を敵に回してしまった。これは大失敗でしたね。捜査では国民を敵に回してはダメ。常にフォローの風を吹かせないと。アゲインストでは捜査どころじゃなくなる。」とゴルフ好きの一面も。
オウム事件捜査に当たっての感謝をにじませて「警視総監は、警視庁での6つ目のポストだったんです。6つのポストを務める間に信頼してくれる仲間が何人もできて。皆、私を信じてついて来てくれました。」とも。

◆ 最後に
「破防法を適用したかったのですが適用を恐れた他団体の反発、抵抗もあり完全な解体には至らなかったのは大変残念です。しかしながら、与えられた責務は果たせたかと思います。国民の皆さんの協力があってこその結果です。この場を借りてお礼を申し上げ、今日の話を終わりと致します。」と話を結ばれました。
  

◇◇◇◇乾杯◇◇◇◇

河野さん

河野さん

福田さん:きっちり1時間で収めてくださいました。お話しも映像が目に浮かぶようでした。ご質問は食事しながらということで。井上先生ありがとうございました。―皆さん、拍手とありがとうございました!―では乾杯の挨拶は前会長の河野さん。

河野さん:半年くらい前にお願いしまして、オウム事件から30年でお忙しい中、お話し頂きましてありがとうございました。井上さん記憶力が凄くて、ゴルフやってても人のスコアまで覚えておられて…誤魔化しがきかない(笑)。皆さんビールいきわたりましたか?では乾杯!

グラスの音と乾杯の声。

◇◇◇◇ 歓談 ◇◇◇◇

櫻井さんと吉尾さん

櫻井さんと吉尾さん

嘉本さんと横井さん

嘉本さんと横井さん

◇ ユーミンのお話
向かいの席の松田さんに「清水ミチコのユーミンの卒業写真、知ってますか?」とユーチューブ動画の話を「知ってますよ」とお答えでしたがユーミンに気が付かれて「あ、知らない知らない」と。「これです!」とスマホ画面をお見せしました。「これですか(笑)。見てみます」と。皆さん興味が湧きましたら“疚しいことがあると~♪”で始まる経歴詐称を揶揄したユーミソのユーチューブ、検索してみてください。

櫻新旧会長

新旧会長

仲良し!

仲良し!

◇ 竹村さん
いつものように竹村さんが皆さんの席を回られ、私にも「いつもHPありがとね。紹興酒?ビール?」と労ってくださる。「どっちでもいいです」で、ビールを注いで頂きました。松田さんには「新会長、これから宜しく。紹興酒?ビール?」「では、ビールを」で、ビールを注がれて他の方のお席へ。

初参加の大春さん

初参加の大春さん

◇◇◇◇ 新入会員挨拶 ◇◇◇◇

いつものように福田さんの“皆さん酔っ払ってしまう前に”からの新入会員さんご挨拶。

大春さん:S58商卒の大春でございます。3年前定年退職して関連会社に再就職して現在に至るです。谷口君とは高校の同級生なんですが、私の方が1年多く勉強しましたので―笑―1年後輩になりました。谷口君に是非入ってと誘われて入会しました。宜しくお願いします。

◇◇◇◇ 再び歓談 ◇◇◇◇

講師の井上さんと富岡さん

講師の井上さんと富岡さん

◇ 井上さんの個人情報…?
河野さん「井上先生は中大という選択肢は無かったんですか?」「無かったですね。」「山梨出身で京大って珍しいですよね。」「はい。同期500人の中で私1人でした京大進学。」「やっぱり!」「警視総監、私がなるまで京大卒いなかったんですよ1人も。長官も。その後は京大卒からも出るようになりましたけど。今の総監も京大卒です。」皆さん、へ~!勝田さんが「僕も88歳ですが井上さん、お若いですね!」「柔道やられてたから足腰が丈夫。ゴルフもよく行かれるし。」「ゴルフは河野さんの方が多い!」「そりゃ私は仕事だから!」皆さんプププッ。

◇ お世話になった話
「1度お世話になってるんです、警察。」と松田さん。周りちょっとえっ!「大学、原付バイクで通ってたんですけど。バイクでボーッとしてトロトロ走ってたら警察のカブ、白バイじゃなくて、前に居たお巡りさんのカブにコンッて。で、ちょっと来なさいって交番に連れてかれて、何やってんのって訊かれて…中大法学部の学生ですって答えて。」皆さんクスクス。「お説教されたけど、まあしっかり頑張ってって帰してくれました。その後は1度もお世話になってません!」で、皆さんアハハ。「お世話したと言うか…弁護士になってから1年だけ警察学校で民法の授業やりました。事務所のボス弁の替わりに。でも民法なんてあまり興味ないから退屈そうで。調書は達筆すぎると読めないから下手でもいいから丁寧に書いてって言った時だけ、笑ってくれました。」と。

木下さん 井原さん 落合さん

木下さん 井原さん 落合さん

勝田さん 成田さん 境さん

勝田さん 成田さん 境さん

◇ あれが最後だと信じている箱根駅伝予選会の話
「去年の箱根の予選会、暑かったですね。」と後藤さん。「でも、猛暑の今年じゃなくて良かったです。」「あの後の祝勝会、国分寺で凄い飲みましたよね。」「そんなに飲みましたっけ?」「飲んだよ。河野さんが奥さんに怒られて。」「ああ、家族の大事なイベントがあるからあんまり飲めないって言ってたのに飲んじゃって!」「そうそう。息子さんがお付合いしている方との顔合わせだから、飲まないで帰ってねって奥さんに言われてたのに!」「結局、最後までいて、まあまあ飲んじゃって!」「後で奥さんに凄く怒られたって!」ごく一部で大笑いしました。河野さん、ごめんなさい。

松田さんと後藤さん

松田さんと後藤さん

大春さんと谷口さん

大春さんと谷口さん

◇◇◇◇締めの挨拶へ◇◇◇◇

福田さん:そろそろお開きなんで、櫻井さんに野球部の話を。

櫻井さん

櫻井さん

櫻井さん:昨日、ジャイアンツタウンスタジアムで中大、試合があって2勝しました!―拍手―岩城君ていうピッチャーが左で球が速いんです。ストレート152キロでスプリットが138キロ。落差があるから亜細亜大、全然打てなかった。大谷が投げてるみたいで―皆さん大受け―圧巻でした!多分ドラフト指名されると思いますのでご注目を。是非、神宮で生で見て頂きたい!宜しくお願いします。

福田さん:警視総監お迎えするなんてめったにないんで、皆さんで記念写真撮りましょう。では、締めの挨拶は松田新会長からのご指名で新会計監査の吉尾さん。

吉尾さん

吉尾さん

松田さん:挨拶ってなると重鎮にってなりがちですが、固定化しそうなんで私の任期中は誰にやってもらうか分からないという(笑)。で、トップバッターは吉尾さんにお願いします。

吉尾さん:H7卒の吉尾です。去年の7月入会したばっかりで、松田先輩から少し前にお話し頂いてて…こんな自由な会で…。一番下くらいなのに挨拶って想像もしてませんでした!井上先生のお話し、勉強になりました。仕事の上でも参考になります。まだ50代前半なんで頑張りたいです。ありがとうございました。

福田さんの「じゃあシャシャシャンで。1本?3本?あ、では1本で。」で、1本締めへ。その後、全員でカシャリ、記念撮影。

皆さんでカシャッ!

皆さんでカシャッ!

 福田さんの“名札だけはお返し頂いて”に“今日は楽しかったね”の声が重なる中、帰路に着きました。
 新幹事の皆さん、お世話になります。宜しくお願いします。

雨後の東京駅の空

雨後の東京駅の空

(木曜会・柳)